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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

支え 2020年5月

校庭の花壇は、園芸委員会が植えた花が色とりどりに咲き誇っています。春の日差しを浴びて、うさぎのクロちゃんが、気持ちよさそうに伸びをしています。いつもと変わらない風景が職員室の窓から見えているのに、新型コロナウィルス感染症予防のために休校が続いている今年は、日常生活が戻りません。入学式をしただけで休みに入った1年生は、まだその姿を上級生に見せていません。「昆虫も植物も生長を待ってくれないから、理科は画像が中心になってしまうなあ。観察学習をさせたいな。」理科の教科書をめくりながら、教師の嘆き節が聞こえてきます。

9年前の2011年の、不安な春を迎えたことが思い出されます。1000年に1度といわれる規模の大地震が宮城県沖を震源地として発生し、様々な問題が起きました。電気や水、ガスといったライフラインの復旧が待ち望まれ、流通の止まった中で食料品や生活用品を求めて開いている商店を探すといった日々が続きました。私は当時、多賀城から通勤していたのですが、崩れ落ちた家々や折り重なるように積み上げられた廃車の数々を、毎日目にすることになりました。そんな中で暗い気持ちを奮い立たせたのは、周りの人々とのつながりでした。日本国内はもとより、世界中から支援や励ましのメッセージが届き、私たちは前を向いて、日常生活を取り戻していきました。人は、心の支えを持つことでどんな困難にも立ち向かえることができるのだ、と改めて知ることができました。
 
先が見えない時は、不安感が押し寄せます。成長著しい学童期の子供たちにとって、閉塞感のある毎日を過ごすことは、大人が感じる以上に厳しい経験でしょう。仲間とじゃれ合い、体を使って表現することが楽しい時期に、家の中で過ごすことが求められています。
Stay home. 頭ではわかっていても、現実の生活は言うほどにはたやすいものではありません。宇宙飛行士の若田光一さんが、宇宙ステーションに滞在している日々の過ごし方を話していました。生活リズムを維持するために、自分で決めたルーティンを守り、4か月以上の日々を限られたメンバーと狭い空間で過ごしていたというのです。今、この状況を宇宙ステーションの疑似体験と考えることもできる…若田さんの話を聞きながら、そんなことを考えていました。想像力は人間が持つ素晴らしい能力の一つです。
子供たち一人一人が、神様から与えられているすばらしい想像力を働かせ、自分の置かれている状況を悲観的にとらえず、自分ができることが何かを考える時間を持ってほしいと切に願います。そして、自分たちが支えになっていることにも気付いてほしいと思います。この経験からさえ、良いものを見出すことができる力が与えられていると信じています。

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