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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

ウサギ 2023年10月

飼育小屋に、待望のウサギがやってきました。約1年前に先代のウサギのクロちゃんがその寿命を終えてから、飼育小屋は主を失った状態が続いていました。クロちゃんはウサギとしては随分長生きでしたが、その間、学校の動物飼育に関する状況は大きく変化していました。

以前は、学校で動物を飼育することはどこでも見られる風景でした。けれども、動物を学校で飼うことがだんだん難しくなってきたことは肌感覚で感じていました。記憶に残るものとして、鳥インフルエンザの発生があります。本校でチャボのイースター君やひめちゃんを飼育していたころ、飼育方法などの調査が頻繁に入るようになりました。併せて、チャボの鳴き声がうるさいと近隣に住む方々からご意見を頂くようになりました。学校が住宅街にあること、鳥インフルエンザは飼育小屋で飼っているチャボでも野鳥から感染する可能性があることなどから、チャボを手放すことを決めました。幸い「碁石チャボ」という珍しい品種だったこともあり、大切に育ててくださる方のもとに行きました。学校では、静かな動物がいいと考え、それまで一緒に飼育していたウサギだけを飼育することにしました。ウサギは雄雌の区別を見分けることが難しかったこともあり、どんどん増えて里親探しに奔走したこともありました。10年近く前にクロちゃんを飼うようになった時には、1羽だけの飼育にするようにしていました。広い飼育小屋でのびのびと過ごしているように思っていたのですが、学校で動物を飼育するのは動物愛護の観点からも望ましくないという意見がマスコミの中でも語られるようになってきました。ゲージを用意して、気温の低い日は屋内に置くなどの工夫をしながら飼育を続けました。クロちゃんがその寿命を終えた時、子供たちはクロちゃんに手紙を書き、手を合わせてその死を悼みました。クロちゃんを通して「死」を考え、宗教の時間を使って「生きる」ことの意味を話し合ったクラスもありました。遺骨になって帰ってきたクロちゃんのお墓を作り、お花を供えてこれまでのクロちゃんの思い出を語り合いました。

新年度を迎え、飼育・園芸委員会のメンバーは、新しい動物を迎えるための話し合いを行い、

「私たちは、クロちゃんとの生活を通して命の大切さを学びました。そしてクロちゃんがいたことで、ドミニコ小は明るく優しい雰囲気でした。そこで、今年またドミニコ小に新しい動物を迎え、クロちゃんの時と同じようにドミニコ小を明るく、優しい雰囲気であふれる学校にしていきたいと思います。委員会のみんなでお世話をしていくので準備のほどよろしくお願いいたします。」

と、全員の署名入りの手紙を持ってきました。その思いに応えようと、ウサギ探しを始めましたが、店頭で求めようとしても、屋内で飼育という条件付きが多くなかなか見つけることができませんでした。縁あって、ドミニコ小に来たピーター君。(この名前もアンケートによって決まりました。)飼育小屋に、ウサギの姿を見つけた時の子供たちの笑顔。休み時間に飼育小屋の掃除に走る子供たち。子供のお迎えに来た保護者の方々も、ウサギを見て微笑んでいます。給食のスタッフの方々が、新鮮な残菜を用意してくれます。たくさんの愛情が注がれていることが伝わります。

休みの日のお世話をどうするかなど、学校で飼育する場合の課題はたくさんあります。その一つひとつを話し合いと協力で解決していこうと思います。世の中の流れと逆行しているかもしれません。けれども確かに「優しい雰囲気」がウサギのピーター君を通してあふれてきていることを感じます。学校にウサギのいる日常が戻ってきたことに感謝しながら、大切に飼育していきたいと思います。

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