大人として 2019年6月
6歳から12歳までの児童が小学校に在籍しています。成人にとっても6年という年月は決して短いものではありませんが,学童期の6年間は驚くほど長く変化に満ちたものです。体つきももちろんかわります。入学したころは17センチや18センチの上靴をはいていたのに,23センチや24センチの上靴が窮屈だと言ったりするのです。かがんで話を聞いてあげていたはずなのに,いつの間にか立った状態でも目線があいます。体格だけではありません。「先生」「先生,あのね。」「先生,〇〇さんが…」と口々に教師の周りで自分の話を聞いてもらおうとしていた時があったことを忘れたかのように「先生,僕の意見は違います。」「今日,みんなで話し合った結果なのですが…」と自分の考えを伝えてきます。「先生,〇〇さんが牛乳こぼした!」と大騒ぎしていた頃が嘘のように,ランチルームで1年生のこぼした牛乳をさっと拭くなどの行為を自然体でしています。どうしたらいいのかを判断して行動するのに,指示を必要としないことが多くなっています。誰かのために,自分の力を生かすことに喜びをもって行動する姿を見ると,その成長をまぶしく思います。
できることが増えるということは,うれしいことです。人を頼らずに進めることは,どんなに楽しいことでしょう。言われて動くことは,日常生活の中では多くあることで,それは仕方がないことなのですが,何となく「やらされた感」が強く心から楽しめません。自分でやろうと思ったことは,それが多少大変なことでも苦にならないのに不思議です。同じことをするのに,考え方ひとつで,気持ち一つで楽しくなったり苦痛になったりするのです。また,できない状態になった時,できることがなんと幸せだったかということに気付かされたりもします。義務感だけでやっていたことでも,例えば体調が悪く誰かにやってもらう立場になった時,自分で出来るという,ただそれだけのことがいかに恵まれているかを知るのです。
「これは私の仕事ではない。」「当番が決まっている。」「いつも私ばかりしている。」「〇〇はだらしない,また押し付けられた。」…自分がしない言い訳,しない誰かを責める言葉は数限りなく続けることができます。できれば,楽な方を選びたいと,もう一人の自分がささやきます。
成功と失敗の経験を重ねながら,一つ一つできることを増やし,できることが楽しくて仕方がなかった時があったことを忘れ,誰かのためにすることを損得で考え始めた時,人間関係がぎすぎすするだけではなく,自分自身の心も傷つけています。
自分の力で,誰かのために手足を動かせる幸せを表現している子供の姿に出会うとき,その心を育てていかなければならないと強く思います。それには,私たち周りにいる大人が,相手の立場に立った行動をとることを示すことが何より求められるのでしょう。「親の背を見て子は育つ」とある通り,子供に向き合う私たちは大人としての態度がいつも問われています。
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