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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

プラスチックごみ問題を通して 2019年7月

プラスチックごみのことが、新聞やテレビのニュースで大きく取り上げられています。東京オリンピックまでに、レジ袋の有料化やプラスチックごみに対する姿勢を示そうと、有識者が会議や提言を重ねています。プラスチックごみ問題は、身近な問題でありながら、なぜかごみ袋有料化が大きく取り上げられることが多く、環境汚染問題やマイクロプラスチックの生物濃縮についての紙面が少ないように感じます。

今から60年以上前に、有明海の水俣湾で発生したといわれる水俣病は、工場の廃液に起因したものです。けれども人間が発症するより前に、水俣湾周辺の猫が突然狂死して、猫が姿を消したという出来事が記録されています。工場から排出されたメチル水銀が水俣湾や不知火湾の魚や貝、タコなどの体内で濃縮され、それを食べていた猫がまず水銀中毒を発症しました。ほとんどの猫がいなくなっていった漁村で、やがて胎児、子供といった体の小さな弱いものをはじめたくさんの村人が同じ物質で体の異常を発症したのです。水俣病の患者さんの健康は今も取り戻すことができません。
プラスチックごみの海洋汚染やマイクロプラスチックの生物濃縮は、水俣病の歴史と重なります。私たちは、知らず知らずに大量のマイクロプラスチックを摂取している可能性があるのです。

6年生の宗教で、現代に起きている問題として、このプラスチックごみを取り上げました。スライドで安価で丈夫なプラスチック素材によって私たちの現代的な生活が豊かになっていることを確認した後、海洋汚染など今起きている問題を示しました。このプラスチック問題の学習について学びはじめの感想です。

・未来の人類のことを考えながら生活をしていくべきだ。
・命を大切にし、行動する努力が必要だと思った。
・本当は当たり前だと思って使ってはいけないと気付いた。
・今まであまりにもプラスチックに頼りすぎていた。
・プラスチックを利用するのを減らすことが全世界の人々に対する課題だと思う。
・自分のことだけではなく他の生き物や人のことを考えてほしいと思った。私も考え直したい。

6年生は、便利なプラスチック製品に囲まれて生活をしていることを踏まえた上で、この問題を先延ばしにしてはいけないと考えていました。社会問題といわれる大きな問題も、日常の身近な生活と結びついていることがあります。他人事とは考えず、自分たちの課題であるととらえた時、考え方も行動も変えることができます。身近に起きていることに対して無関心にならず、自分ができることを誠実に取り組む力を、子供たちだけではなく私たち大人も養い育てていきましょう。

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