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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

チャイムに寄せて 2023年7月

今年創立70周年を迎えた小学校には、40年・50年という時を超えてまだ現役でいる器具や教具、備品があります。ランドセルロッカーとして作られた棚を、本棚や外靴入れなどに転用していると、造作業者の方に「一枚板で作ることは、今はもうできないことだから、大切に使ってくださいよ。これは、うちでつくった物だと思うけど、こうした材料は、今は残念だけど手に入らないから。」と声をかけられました。もう一つ、古いけれど掛け替えのない物があります。時間を知らせるチャイムです。昭和44年(1969年)Victor製のハンマーで音階を叩くシステムのチャイムは、去年3月の地震の影響で1度音が鳴らなくなりました。仕方なく電子音のチャイムに切り替えたところ、「音が違う。以前の音には柔らか味があった。」と、子供たちが言うのです。音階は同じなのに、毎日聞いていた音と違うことに気付いた子供の耳の鋭さに驚きました。残念ながらVictorという会社そのものがないので、いろいろな修理業者に確認したのですが、どこからも芳しい返事は返ってきませんでした。学校事務の方が手を尽くして、ようやく一人の技術者が紹介されました。チャイムの構造をよく見た後、部品が摩耗している事、既にそうした部品を作る会社がなくなったことなどを伝えてくれました。もう、修理をすることは無理だとあきらめかけた時、その技術者はしばらく預かって工夫してみると提案してくれました。修理はできました。さすが、日本の技術者と喜んでいると、「もし、次にゼンマイが切れて音が鳴らなくなったら、その時は残念ですがもうむずかしいですよ。部品さえあれば直せるけれど、それがない時代だから。」と話されました。それから1年、チャイムは子供たちに時を知らせています。放送朝礼の時、チャイムの鳴る時間に放送室に飛び込んできて、「この叩くところを見るのが、大好きなんです」と係の子供が見上げていました。ずっと音を鳴らし続けてほしいと願った瞬間でした。

 

今は便利な時代となり、物もあふれています。何でも手に入りそうな気がするのですが、足元を見ると大切なものが失われつつあることに気付かされます。未来を担う子供たちの生活の場である学校は、時代の要請に応えて新しいことや物を取り入れていく必要がありますが、同時に時を超えて大切にすること、大事に扱う物があることを子供たちに伝えていかなければなりません。物を粗雑に扱う、使い捨てにするといった姿勢では、人を大切にする子供は育たないと思うからです。一つひとつの物の歴史や背景が語り継がれることで、愛着が生まれ大切にしようという気持ちが芽生えます。新しい物に置き換える方が、ずっと簡単で体裁が良いということが多いのですが、ちょっとこだわっていきたいのです。物を大切にすれば長持ちさせることができる、こまめに掃除をすることで気持ちの良い環境が保たれる、面倒だと思うことでも続けることで維持ができる…そういったことを日々の生活の中で実感させることが、「大切にする」という行動につながると思っています。

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