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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

ことばの力 2024年9月

この夏、観客の入ったオリンピックやパラリンピックはこんなにも盛り上がるものかと、改めて感心しました。いいプレーに湧き上がる歓声や応援の声、競技が決まった時に起こる地響きのような拍手の音。映像に映る楽しそうな観客の笑顔。3年前の東京オリンピックとパラリンピックは、新型コロナ感染症予防のため無観客開催でしたから、球技種目のボールの音や競技場での地面を駆け抜ける音など、これまでとは違う音を聞くことができました。でも大会を作り上げるために準備してきた関係者の方々は、観客の声に包まれた大会を開くことを胸に取り組んでいたのだろうなと、パリでの大会を見ながら考えていました。観客の声が、選手に力を与えていると感じた場面が多かったからかもしれません。

言霊(ことだま)という言葉があります。国語辞典には「古代、ことばに宿っていると信じられた不思議な力。」とありますが、昔の人の考えの深さは、情報過多の中にあって何でもわかっている気になっている現代人にたくさんの示唆を与えてくれます。不思議な力とは、「良い言葉を発すれば良い事が、悪い言葉を発すれば悪い事が起こる」ことを指しています。思いを伝えるという言葉の役割を考える時、言霊という言葉は真理を表していると思えてきます。

最近話題になっている「最適脳」(新潮新書)の中で、感情を左右させる脳内物質について詳しく語られていました。物事に対して自分の発しているネガティブな言葉が、自分の感情をネガティブな方向にもっていくというものです。ネガティブな言葉を繰り返し発することは、自分自身にネガティブな感情を根付かせます。反対に、物事を良い方向から見ようとするポシティブな捉え方は安定した感情に結びついていきます。実際、スポーツなどの中継を見ていても、励ましや応援の言葉・ファインプレーを讃える言葉は会場を明るくし連帯感を生んでいますが、ブーイングやヤジ、相手を貶める言葉が発せられていると、会場の雰囲気が険悪なものにかわっていると感じます。良い感情も悪い感情も、発せられる言葉で伝わっていくことが多々あります。

これからを生きる子供たちに、言葉の大切さを伝えていきたいと思います。人との関わり合いの中で、相手を大切にすることが自分自身の幸せにつながっていくことに気付かせたいと思います。自分の発する言葉の重さを知り、穏やかな言葉は、平和をつくりだすことを日々の生活を通して伝えていきたいと思います。丁寧な言葉で相手に話すことで友好な関係がもたらされること、反対に「ウザイ」「キモイ」などの雑な言葉が相手を傷つけ自分自身の価値も下げてしまうことを伝えていかないと、不用意な言葉遣いをしてしまうからです。同時に言葉の持つ強さを知り、自分自身を力づけていく言葉を活用できるようになってほしいと願っています。どんな状況にあっても「大丈夫、私なら乗り越えることができる。」「大丈夫、私には成し遂げる力がある。」「大丈夫、わたしは一人ではない。助けてもらうことができる。」「大丈夫、私には声をあげる勇気がある。」と自分自身に語り掛ける言葉を持つことで、力を発揮できると考えるからです。自分を奮い起こし、自分から行動に移すため(そして持続させるため)の言葉を身につけることで、可能性が拡がっていくことでしょう。言葉の力を知り、正しく遣える人へと成長できるよう、学校生活を通して学ばせることが私たちの大切な役割だと考えています。

 

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