いつも喜んでいなさい 2024年10月
小学校の朝は聖歌と祈りで始まります。子供たちの歌う聖歌の歌詞は難しいものではなく、その為か子供の声で歌われると心に響くものがあります。9月の聖歌の歌詞は「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべてのことについて感謝しなさい。」という短いものです。聖書にある言葉(1テサロニケ5-16)にそのままメロディをつけた聖歌を一生懸命に歌う子供の姿や声に接すると、この聖書の言葉が自然と体の中に入ってくるように感じます。この言葉の示している意味は決して難しいものではありませんが、伝えている内容は深いものがあります。
子供でも大人でも、日々の生活の中で思い通りに物事が進む方が稀と言ってよいでしょう。時にはそこに感情が入り込み、「こんなはずではなかった」「どうして相手は自分の気持ちを素直に受け止めないのだろう」「うまくいかないことがあって面白くない」…たった一つの出来事で気持ちが暗くなることがあります。気にしないでおこうと思っても、つい考えてしまうことがあります。こだわっていることに気付かされます。それが人の心だと思うのですが、それを聖書では「いつも喜んでいなさい…」と無理難題とも思えることをいうのです。「聖書が示すことは難しく、厳しい」と思い、「私には無理だ」という気持ちに流れてしまいそうになります。
そんな時に、気づきを与えてくれるのが子供の姿です。いつの時代もそうですが、遊び時間の子供の様子はとても楽し気で、時折上がる歓声や笑い声が今この瞬間を楽しんでいることを伝えています。水浴びをしてきたかと思うほど髪をびっしょり汗でぬらし、友達同士で夢中になって走り回る姿を見ると、大きな声で「何しているの?何が楽しいの?」と声をかけたくなります。周りのことが目に入らないほど夢中になって取り組んでいる姿に、子供たちの「喜び」を感じます。日々の生活の中で、「喜び」を表現していることにまぶしさを感じます。こんな風にてらいもなく「喜び」を表現できるのはいつまでなのでしょうか。
「絶えず祈りなさい」という聖句は、宗教を信じる者にとっては受け入れられることですが、宗教と距離を置く日本人にとってはちょっと引いてしまう表現かもしれません。カトリック学校である本校の祈りの対象はキリストですが、カトリック信仰を推すものではありません。自分を超えた絶対なるものの存在を知り、自分の行動が損得勘定だけで動いていないか、自分の考え方や生き方が独りよがりになっていないかを振り返ることを「祈り」として表します。それは、「対話」とも表現できるかもしれません。そしてそこには、他者(人とは限りません)に対する感謝の思いが伴ってきます。
この聖句は、「喜び、祈り、感謝する」ということを特別なこととしてとらえるのではなく、日々の生活の中で折に触れて思い起こし実践していくことを勧めているように思います。難しい、無理だと諦めるのではなく、小さなことにも目を向け喜び、祈り、感謝することで、心に余裕が生まれ幸せが訪れることを伝えています。
子供の歌声で伝えられる聖句の優しさです。
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