教育の目的 2022年6月
新型コロナ感染症に関する注意は怠ることはできませんが、それでもこれまでの2年間の制約から見ると、学校生活や学校行事に対する社会の要請は少し寛容になってきています。予防対策のみを強調することから、子供を健全に育成するために必要なことは何かを共に考えようとするニュースも増えてきました。子供対象の屋内外でのイベントも開催されるようになり、学童期の大切な時間を支えていこうとする取り組みも増えてきています。コロナ前に戻ることは難しいとしても、少し明るい見通しをすることができるようになってきました。
2020年3月から3カ月近くに及ぶ全国的な休校措置、人が集まることを全面的に抑制する動き、マスク着用の徹底、消毒の徹底、グループ活動の制限…様々な対策は、子供を感染の危険から守るために始められました。その一つ一つは、専門家の意見を聞いた適切なものであったと思うのですが、子供たちの学校生活を窮屈にしたことも事実です。「子供たちのために」と思っていることが、子供たちのためになっているかどうか、そんな自問自答が続く日々であったように思えます。その自問自答は、「学校教育とは何か」「学校教育は何を目指すのか」という根源的な問いにつながりました。『共に学び、共に在ることが喜びとなる、生き生きとした学校』を目指し、学校行事を大切にしてきた日々が「密を避ける」という文言のもと、見直しが必要になりました。一つ一つの行事の目的を考え、この行事を通してどんな子供を育てたいのか、問いを繰り返しながら形作る作業が続きました。外から見れば「行事の縮小」に映ることも、前例にとらわれない子供主体の行事への転換を目指したものでした。
上智大学のホアン・アイダル師はフランシスコ教皇の言葉として、「教育の目的は、決然と弱者を擁護する者を育てることにある」と紹介しています。これは「人を先にするか、自分を先にするか」というシンプルな問いで、他者を中心にした世界観を育てることが教育の使命だと教えているのです。例を挙げながら「人を助けようとすれば、面倒くさくなるが豊かになる」と語ったホアン師の言葉は、私たちが学校教育の中で目指す指針となります。子供たちが、より小さい者たちの為に自分の力を発揮することを学校行事の中で体現させたいと思います。
新型コロナ感染症を経験したことで、私たちは受け入れなければならない変化を知りました。自分の望む方向であるかどうかに拘わらず、受け入れることが求められました。大切な事は、目的です。時々の現象に思い煩うことなく、何を目的としているか、目指していることは何かを見失わない教育活動を続けることを使命として、子供に対峙していきたいと思います。
校長メッセージ バックナンバー
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- 待つということ(待降節を通して)
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- 褒められた時には
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- 児童書によせて
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- 絶対ということ(又はお鍋の話)
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- 時代の中で求められること
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- 教育の目的
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- 聖母月に寄せて
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- 春爛漫
- 3月
- オミクロン株
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- 18歳成人に向けて
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- 成長を見せる寅年
2021年
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- 待降節:アドベント (Advent)
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- 感謝ということ
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- 価値観の違いに気づいた時に
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- 読書への思い
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- 自治を学ぶ
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- 学びについて
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- 始まりの季節
- 3月
- 春に向けて
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- つながれていくバトン
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- 新たな年を迎えて
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- 教皇様の来日に寄せて
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- 対話
- 9月
- 日常の生活を保つために
- 7月
- プラスチックごみ問題を通して
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- 大人として
- 5月
- 読書の時間
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- ランドセルから見えてきたこと
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- 春に
- 2月
- 「漢字一字」に込める思い
- 1月
- 言葉の力
2018年
- 12月
- クリスマスを祝いましょう
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- 死者の月
- 10月
- 信じる
- 9月
- 日常の生活を保つために
- 7月
- 出来ない不安,出来た喜び
- 6月
- ・・・のために
- 5月
- 「関わり」を通して見えること
- 4月
- 共に目指すこと