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校長メッセージ

聖ドミニコ学院小学校
校長

土井 智子

聖ドミニコ学院小学校 校長 土井 智子

たてわりの魅力 2024年5月

ある程度成長すると、5年という年齢差はあって無いようにも思えるのですが、学童期の5年の差は大人と子供ほどに違うように見える時があります。幼稚園や保育園、こども園では年長さんとして周りをリードしてきた園児も、小学校に入ると一番下の学年になります。新しい環境で不安な表情を見せる1年生に対する6年生のサポートは、見事です。お父さんに手を引かれた1年生の姿が見えた時、手を振ってお迎えし、児童玄関の靴箱へと案内し、次はそこで待っていた6年生に引き渡し教室へと促します。教室ではまた違う6年生が、ランドセルから教科書を出すのを見守ります。いつもなら、真っ先に校庭に出て遊んでいる6年生が、自分のミッションとして献身的ともいえる姿勢でサポートします。「6年生が1年生のお世話をする」ということは、当然のこととして捉えられていて、特に細かい指示があるわけではありません。学校に早く来ることのできる6年生もいれば、スクールバス利用でぎりぎりの時間に到着する6年生もいます。だから、その場にいるメンバーで役割分担をして、1年生が安心して過ごせるよう気を配っているのです。毎日繰り返される朝の風景は、そろそろ独り立ちできるかなと思えるゴールデンウィーク明けまで続きます。そう言えば今年の春に「高校2年になった時に必ず遊びに来ます。(私たちが)お世話した1年生が6年生になった時の姿を見に来ます。」と言った卒業生がいました。周りで見ている以上に、結びつきが深まっていることに気付かされます。

子供の数が多かった昭和の時代は、自然発生的に異年齢で遊ぶ集団の存在がありました。社会の状況が変化する中で、子供だけで遊ぶ姿を見ることは徐々に難しくなってきました。公園で遊ぶにしても、同年齢の小グループといったところでしょうか。自然発生的に子供が群れて遊ぶ姿を見ることは、本当に稀になっています。人は、経験を通して学ぶことが多くあります。年下の面倒を見るということは、相手に目線を合わせることや、思いを聞き入れながらルールを学ばせること、自分の力で出来るようにさせることです。自分でやってしまった方が早いし楽だけれど、そしてやってあげて「ありがとう」と言われた方が嬉しいのに、あえて自分でできるようになるまで待ってあげる根気強さは、相手を想う優しさから生まれます。「お世話するだけではなく、自分で出来るようにさせてね。」教師の無理な注文に、6年生は笑顔で「はい」と答え、根気強く関わっていきます。1年生をお世話することで、6年生が成長していくのがわかります。一緒に給食をとり、一緒に遊ぶといった物理的にかかわる時間が増えるにつれ、6年生が1年生に伝える言葉を上手に選ぶようになっていました。また、ちょっと生意気ともとれる言い方については、穏やかな表情でたしなめている場面もありました。

学校は、教科の学習をするだけの場ではありません。もちろん新しいことを学び吸収させ、力をつけることは大きな目標ですが、行事を通して協力してつくりあげる経験や日常生活での関わりは、学校生活で得られる大きな魅力です。学年の違いを意識しない関係作りに、たてわりの活動が一つの役目を担っています。

 

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